2019/11/03 01:17

液体の街には様々な灯台があるが、このジンベエザメのように魚が灯台の役割を果たしているものは珍しい。
近くに群生するホタルイカを海水と共に上に吹き出し、そのホタルイカのまばゆい光が灯台として機能している。

このジンベエザメは、クジラに育てられた。そのため自らもクジラだと信じて育ち、大人になれば自分も塩を噴けると思っていた。
無邪気に塩が噴ける日を楽しみにするジンベエザメに、クジラママはどうしても本当のことを言えずにいたが、徐々にひらべったく成長する体に疑問を持ったジンベエザメがママを問い詰め、とうとう自らがクジラではないことを知る。

自分がクジラではないと知った時とてもショックを受けて、しばらく上下逆さまでしか泳げなくなるほど落ち込んだ。

落ち込む我が子の姿に心を痛めるクジラママの近くを、パトロール中の海難救助ペンギンが通りかかった。
事情を聞いたペンギンはさっそく浜に戻って仲間に相談した。

数日後、まだひっくり返ったままダラダラと泳ぐジンベエザメの元にある手紙が届いた。

「その大きな体で、波にも負けず雄大に泳ぐ君に、依頼したい仕事がある」
そんな手紙だった。

ホタルイカにとっては、何よりも楽しい遊びになっているんだそうだ。
口から入れた海水を背中の煙突のようなパイプから吹き出せる装備を身に着けて、体の側面につけた装置でホタルイカを吸い上げ、パイプから勢いよく噴射する。
テンションに応じて輝度が変わるこのホタルイカを、楽しませながら高く打ち上げることで、真っ暗な海の道しるべになっている。

あの光はなんですか?と年老いたペンギンに尋ねたら、そんなジンベエザメ、いやジンベエクジラの話を聞かせてくれた。
遠くで吹きあがる青い光はとてもキレイで、うれしいという感情がもし目に見えたら、こんな風に心に吹き上がって見えるんじゃないだろうか。
今まで遭難や難破が多かったその海域を航行するのに、その光はとても助かっているのだという。