2019/10/30 04:34

液体の街は海岸周辺とその近辺の海中に広がる街で、海中の一番深いところは地球の海とそう変わらない深さにもなる。
通常では光など届かない暗黒の世界。そんな環境にも街ができた理由の一つがこの「水中灯花」である。

この植物の特徴は、通常の植物とは逆に水面から下、深海に向かって成長してくことと、その根や茎が光を増幅しつつ通すことである。
病気や根、茎の損傷がない限りいつまでも成長を続けるその植物は、真下に向かって茎が伸び、その途中途中にある葉と、先端に咲く大きな花から光を放つ。

特に長く成長した3本の花の光によって、液体の街周辺の海はどれだけ水深が深くても、孤独な暗黒の世界にならなかった。

茎の太さは大きなクジラよりも太いが表皮や構造の特徴は木でなく草に近い。色も青みかかった緑色なため、木ではなく草花だと考えられている。
液体の街から離れるとその数は減っていくことから、川からくる何かしらの養分を必要としているのではと思われるが、はっきりとはわかっていない。

根は水面に沿うように広がっていく。複雑に絡み合った頑丈な根は、長い年月を経て別の植物が生え、見た目は小島のようになっている。
葉はユリの花の花弁のような形で、茎と同じく鮮やかな青緑色。葉脈の間に透明な球状の通光器官がいくつもあり、そこから光を放つ。
茎や葉を傷つける魚から守ってくれる用心棒のような水棲生物を、その光によって呼び寄せているのだそうだ。

花は白く丸みを帯びた3~5枚の花弁を持ち、花弁の中央に丸く透明なめしべと、その周辺に同じく透明でクラゲの足のような雄しべがある。
数年に一度受粉し、水に浮く種が光を放ちながら水面に昇っていく。その光景はとても美しく、液体の街のお祭りとして世界中の人が集まるイベントとなっている。