2019/10/10 22:25

雷雲の中を泳ぐ雷魚類で、体長は地球の単位でいえば3mほど。雷魚類の中では大型の部類だ。
口から短距離の放電ができ、知能が高く魂言葉で他の生物とコミュニケーションが取れる、数少ない雷生物である。

戦争時代には塩水を吹くタンクを装着して電撃を含んだ塩水を吹くことで射程距離を伸ばし、
それによって一時的に麻痺した相手に落雷砲を落とさせる生物兵器として活躍。周辺の国に恐れられた。

現在確認されているのはすでに年老いたポンじい一匹だけで、電気鉄砲魚最後の一匹と思われる。

非常に温厚でのんびりしており、戦争時代の姿など想像もつかない。
雷の街の住人は短命か、長寿でも言葉が話せない者が多いため、戦争を生きた数少ない者としてその悲惨さや教訓を定期的に雷生物たちに話して聞かせている。それは大人子供関係なく心に響くものらしく、元来短気で短絡的、つまりはケンカっぱやい種が多い雷生物だが、ポンじいさんのお話会が始まってからは争いを嫌う者が増えたんだそうだ。

お話会の他にも新しく生まれた雷生物に、雷雲の中を案内している。
その際、地上に届く前に気化する塩水を吹いて、雷雲同士をつなぐ橋を作り、雷生物を渡らせているそうだ。

一度話を聞いてみたいが魂言葉が古いらしく、正しく翻訳することが今の技術ではまだ不可能だと聞いた。
もし翻訳ができたら、本の街に持っていって誰かに書いてもらいたいと思っている。

今日も小さな雷生物たちとともに、誰の命も奪わない雷の中を、ゆったりと泳いでいることだろう。