2019/10/07 12:30

植物の街と鉱物の街をつなぐ川の真ん中あたりに、ガスの街がある。
そこは、さまざまな固体や液体の物が気化してしまう、不思議な場所。

植物や金属だけでなく、生物でさえもガス化してしまうその場所に住むのは、長い間、雲の人などのガス生物や、ガス化してしまったものの意思を残した者のみだった。

研究の街のある命知らずが、気化してしまうものにはある程度の法則があることを発見し、それをきっかけに街中の研究者の好奇心に火が付いた結果、気化する確率が低い物質が判明。

気化しづらい物質を用いることで、採集するための器具や、保存するための容器、家や家具などを持ち込み、ガスを研究する者が増え、徐々に街になっていった。

ガスの街で起こっていることは、固体や液体であることの制約から逃れたいと
望んだもの(有機物、無機物を問わず)の願いが無理矢理叶えられてしまうことで、強制的に気化してしまうことが原因である、と考えられている。

心を読むと言われる植物と、願いを増幅する鉱石、意思を固める鉱石の成分が川を通じて混ざり合い、周辺の地面に溶け込み、それが蒸発し充満していることが主な原因とされている。
こうして混ざり合った液体、気体は「真実の水」と呼ばれている。

通常、心を読む植物の成分と、願いを増幅する鉱石、意思を固める鉱石の成分は、液体でも混ざり合うことがなく、また常温で気化することもないはずだが、ガスの街付近でのみ混ざり合い、気化し、充満しているのである。

それは、最初に生まれたガス状生物が、孤独に苦しみ、仲間を欲したその願いが、ガス状生物の体を通じてできた「真実の水」によって叶えられたことがきっかけで、「気化したい」という願いを叶え続けていると思われる。

気化してしまったものは、固体や液体に戻りたい、と心から願うことで戻れる。これも、最初に生まれたガス状生物の願いが「仲間が欲しい」であり
固体や液体に戻りたいものを無理矢理仲間にしておけないという意思が残っているものと思われる。

意思や願いが弱い物質は、比較的容易に気化、固体化や液体化が可能である。
植物や生物なども、練習を積むことで意思を持ったままのガス化、固体化ができる。意図せず気化してしまったものについても、催眠療法や薬草を用いた瞑想で元の状態に戻れる場合が多い。

物質を気化させることで、パイプを通じて送風機によって物質を輸送することができるため、街はパイプとファン、保存用のボンベがそこかしこに設置されている。

他の街にはない様々な効果を持つガスがとれるため、辺鄙な場所であるにも関わらず、様々な街の住人が訪ねてくる、にぎやかな街となっている。

余談だが、真実の水はガスの街から離れるほど効果が薄れ、物質を気化させる力が薄れていく。
ただ、心を読み、願いを増幅し、意思を固めるという効果は気休め程度に残るため、瞑想を行う際や精神病の治療に用いられる。

また、ガスの街の研究によって有機物、無機物や知能の有無に関わらず意思や願いは存在することも証明された。