2019/11/05 06:55
依頼を受けてものを作ることがほとんどの機械の街。
戦争が終わるまでは、基本的に紹介か、看板なんかを見てなんとなく工房に入ってみるかしかなく、結局誰に頼めばいいかわからない人が続出した。
職人は職人で、変に頑固なものが多かったため、一見さんはお断りだったり、依頼者を気に入るかどうか、種族やどこの住人かなどで依頼を受けたり受けなかったりと、技術は確かながら周りからの評判はあまり良くなかった。
職人の言い分としては、機械のことなんて何も知らないのが当たり前な他の街の住人に、いちから説明したり他の職人を紹介することが面倒だ、ということだった。
結果、顔なじみがいつもの依頼をしにくるか、それの修理ばかりになり、職人も腕を振るう機会がないためイライラするばかり。
それがまた悪い評判を呼ぶ、という悪循環だった。
戦争が終わり、世界が手と手を取り合おうと決めて以降、雰囲気が最も変わったのが、この機械の街かもしれない。
いつどんな依頼が来るかワクワクする職人たちのモチベーションが高く保たれ、依頼を断る職人はほとんどいなくなった。
その理由の一つが、「職人紹介所」の設立である。
職人は、紹介所に自分の得意な技術と工房の場所、作例を登録する。
すると他の街からの依頼者が紹介所を通してやってくる。
それは対面であったり手紙であったりするのだが、どんな依頼であっても紹介所でどの職人にどのようなものを依頼するかを、紹介所の担当が明確にする。
依頼書も紹介所が作ってくれているため、職人は思う存分腕を振るうだけでいい。
依頼者としても、どこにお願いしたらいいか見当もつかない依頼も、職人につっけんどんな態度をとられることなく依頼できる。
結果、簡単な依頼からどう相談していいかわからなかった依頼まで、世界中の街から届くようになった。
この職人紹介所は職人たちの子供によって運営されている。
紹介所を運営するために色々な職人と出会い、様々な技術に触れることは、子供の選択肢を大幅に広げた。
今までは自分の親の後を継ぐことがほとんどだったが、他の職人に弟子入りしたり、他の街の技術を学びに行く子供ばかりになった。
職人たちも、街の子供とあってはあまり邪険にすることもできない。
それどころか自分達の話は子供たちのためになると思えば、どんな素人みたいな質問でも答えることが苦にならない。
機械の街から始まったこのシステムは、職人にも依頼者にも、そして紹介所にもそれぞれメリットがあるため、今では様々な街でも採用されている。