2019/10/12 02:32
雷の街には「雷オヤブン」と呼ばれる3つの大きな雷雲があり、それらが押しつ押されつすることで落雷の範囲や強さのバランスを取っているが、特定の条件が揃うと雷オヤブン達が一点に向かってぐぐっと押され、落雷のエネルギーが集中してしまうことがある。
その結果、オヤブン達のエネルギーが集まる地域で、落雷の性質が変化する。
「ウッコ」と呼ばれる災害である。
落雷が通常より非常に速いスピードで真下に直進し、避雷針や雷採集棒で誘導することもできない。
それどころか運悪く避雷針に落ちようものなら、避雷針の先から枝分かれして水平方向にも直進し、絶縁体にぶつかるまで消えることがない。
蓄電管や電気で動く機器が全て壊れるだけでなく、建物の壁も電熱で溶けてしまい、建物が溶解、崩壊する。
雨のように降り注ぐ落雷で、周辺地域どろどろに溶けるか感電して黒こげ、穴だらけになる、すさまじい災害である。
液体の街の水温が高く、植物の街の気温が低い、さらに雪の街の気温も低くなった際に起こる可能性が高いとされている。
現在ではその予兆を感知して避難指示を出したり周辺を絶縁壁で囲うなどの対策も取れるようになり、人的被害はここしばらくない。
名前の由来は、その昔「ウッコ」と呼ばれる雷生物がいて、雷の矢じりを作って狩りをしていたんだとか。
その姿がとても勇ましかったため長年語り継がれていた。
初めてこの災害を目の当たりにした者達は、直進する雷の様がまるでウッコの放つ雷の矢のように見えることから、畏れを抱いて「ウッコ」と名付けた。
通常の落雷でさえ、空気を裂く轟音と強烈な光の迫力はすさまじいものがあるが、ウッコは比べものにならない音量で、当然ひとたび起これば甚大な被害が出るものの、その様はとても力強く、雷に慣れ親しんだ雷の街の住人は、恐怖よりもどちらかといえば畏敬の念を感じるのだそうだ。