2019/10/07 12:36

[登場人物]
・少年狼ギギ・・・幼い時逆神隠しで両親を無くし、職人狼のボロロアに育てられる。一人でいる時に限って非常に珍しい偶然が起こるが、その話を他の人にしても信じてもらえず、徐々にやさぐれ、いつもじとーっとした顔をしている。

・幼狼ムム・・・事故で両親と右耳を失った、幼い狼。明るく活発な子だったが、事故のショックで驚きやワクワクが理解できなくなってしまった。手先が器用で、複雑な構造のものでなければたいていのものは作ることができる。物憂げな顔をしているが好奇心は強い。

・職人狼ボロロア・・・雪の街のレスキュー隊の装備を作る職人。目つきが悪く口数も少ないが、とても優しく男らしいおじさん狼。

[プロローグ]
月の内側には様々な街があって、色々な人が暮らしています。
その中のひとつである機械の街に、少年狼のギギと、職人狼のボロロアさんが二人で住んでいました。

少年狼ギギは、一人でいる時に限って、とても珍しい場面や現象、生物などに出会う不思議な狼。

嘘のような珍しい出来事が起こるたびにそれを他の人に話しましたが、
よくできた冗談や空想の話だと信じてもらえません。
それでもボロロアさんだけはどんな話でも面白がって聞いてくれるので、毎日一人でお散歩しては起こった出来事を話していました。

ある日二人は、事故で両親を失った幼い狼ムムを引き取ります。
ムムは、事故のショックで感情や表情が乏しくなり、驚きやわくわくを失っていました。

不憫に思ったボロロアさんは、ギギにこんなお願いをします。
「ムムに気づかないふりをしつつ一緒に雪の街へ行き、そこに住む雪山レスキュー隊に新しい装備を届けてほしい」

ギギが珍しい出来事に遭遇するのは一人きりの時。ムムが一緒ではその場面に遭遇することができません。
ボロロアさんは、珍しい場面に遭遇するギギを、離れた位置からムムに見せることで、「オドロキ」を取り戻させようと考えたのです。

ムムに「何かあったら押すように」とブザーを持たせ、ギギはその受信機を胸につけて、「これは一人旅、一人旅なんだ」と言い聞かせながら、街を出ました。

手先が器用なムムは、いろいろな隠れる道具や衣装を作ってギギから身を隠しつつギギについていきます。

こうして、一人のような二人の不思議な旅かくれんぼが始まりました。